年次有給休暇の基本(付与の条件・日数・5日取得義務)
年次有給休暇(年休、有休)は、働く人に法律で認められた休みです。ところが、「入社してすぐ使えるのか」「何日もらえるのか」「会社が取らせなければならない5日とは何か」など、基本のルールでも迷う点が少なくありません。この記事では、労働基準法39条と、厚生労働省の資料にもとづいて、付与される条件、付与日数、2019年4月から全ての使用者に義務づけられた年5日の取得、取得のしかた、有効期限までを順に整理します。給与や手当の金額の計算は、この記事では扱いません。
作成: くらしの道具箱(個人運営) 最終確認日: 2026年11月6日 連絡先: [email protected]
年次有給休暇とは
年次有給休暇は、賃金が支払われる休暇です。厚生労働省の解説によると、働く人の心身のリフレッシュを図ることを目的とした制度で、原則として、労働者が請求する時季に与えることになっています。法律上の根拠は、労働基準法39条です。
この記事では、通常の労働者(フルタイムで働く人)の基本ルールを中心に説明します。パートタイム、アルバイトなど、働く日数が少ない人の付与日数(比例付与)は、勤続年数の数え方と年次有給休暇の付与日の記事に表があります。
付与される2つの条件
年次有給休暇が付与される条件は、次の2つです(労働基準法39条1項)。厚生労働省の特設サイトにも、この2点を満たせば取得できると書かれています。
- 雇入れの日から6か月間、継続して勤務していること。
- その6か月間の全労働日の8割以上、出勤していること。
2回目以降は、6か月が過ぎた日から1年ごとに区切った各期間で、同じように8割以上の出勤が必要です。8割未満だった期間の次の1年は、有給休暇を与えなくてよいとされています(同条2項ただし書)。
出勤したものとみなされる期間
8割の出勤率を計算するとき、次の期間は、出勤したものとみなされます(労働基準法39条10項)。
- 業務上のけがや病気の療養のために休業した期間
- 育児休業、介護休業をした期間
- 産前産後の女性が、労働基準法65条によって休業した期間
「継続勤務」の考え方(定年後の再雇用、契約更新、休職後の復職など)は、勤続年数の記事で説明しています。
付与される日数(通常の労働者)
付与される日数は、継続して勤務した期間によって増えます。労働基準法39条1項・2項の日数は、次のとおりです。最初の10日に、6か月経過日から数えた継続勤務年数ごとの加算日数が加わります。
| 継続勤務期間 | 最初の10日に加算される日数 | 付与される日数 |
|---|---|---|
| 6か月 | (なし) | 10日 |
| 1年6か月 | 1日 | 11日 |
| 2年6か月 | 2日 | 12日 |
| 3年6か月 | 4日 | 14日 |
| 4年6か月 | 6日 | 16日 |
| 5年6か月 | 8日 | 18日 |
| 6年6か月以上 | 10日 | 20日 |
法律では、付与日数を「労働日」(働く日)を単位として数えます。会社が、法律より有利な条件として、入社時にすぐ付与したり、日数を増やしたりすることもあります。その場合は、就業規則に書かれた内容が、法律の最低基準を下回らないことが前提です。
年5日の取得義務(2019年4月から)
労働基準法39条7項により、使用者は、年次有給休暇が10日以上付与される労働者に対して、そのうち5日について、基準日(有給休暇を付与した日)から1年以内に、労働者ごとに時季を定めて与えなければなりません。厚生労働省の解説では、この義務は2019年4月から、大企業・中小企業を問わず、全ての使用者に課されました。管理監督者や有期雇用の労働者も、年10日以上が付与されるなら対象に含まれます。
5日を取得させる3つの方法
厚生労働省の特設サイトでは、使用者が、次のいずれかの方法で5日を取得させる必要があると説明されています。
- 労働者自らの請求・取得:労働者が自分で請求して取得した日数は、5日に数えます。
- 計画年休:労使協定で取得日を決めて与えた日数も、5日に数えます。
- 使用者による時季指定:上の2つで5日に届かない場合に、使用者が時季を指定して取得させます。
使用者が時季を指定するときは、あらかじめ、5日分を与えることを労働者に明らかにしたうえで、取得の時季について労働者の意見を聴かなければならず、聴いた意見を尊重するよう努めなければなりません(労働基準法施行規則24条の6)。すでに5日以上を請求・取得している労働者には、使用者が時季を指定する必要も、指定することもできない、と厚生労働省の解説にあります。
基準日と、5日を取得させる期限の例
基準日は、年10日以上の有給休暇を最初に付与した日です。入社日ごとに、最初の付与日と、その日から1年以内の期限を計算した例が次の表です。期限は、基準日から1年を経過する日の前日です(厚生労働省の解説にも、2019年5月15日入社の人は2019年11月15日に付与、2020年11月14日までに5日、という例があります)。
| 入社日 | 最初の付与日(基準日) | 5日を取得させる期限 | 2回目の付与日 |
|---|---|---|---|
| 2026年4月1日(水) | 2026年10月1日(木) | 2027年9月30日(木) | 2027年10月1日(金) |
| 2026年4月10日(金) | 2026年10月10日(土) | 2027年10月9日(土) | 2027年10月10日(日) |
| 2026年5月15日(金) | 2026年11月15日(日) | 2027年11月14日(日) | 2027年11月15日(月) |
| 2026年10月1日(木) | 2027年4月1日(木) | 2028年3月31日(金) | 2028年4月1日(土) |
表の期限は、休日にあたる日があっても、そのまま計算した日付です。曜日は考慮せず、暦のとおりに計算した日付です。期限の日が休日の場合の考え方は土日・祝日をはさむ日数と期限の考え方をご覧ください。
年次有給休暇管理簿と罰則
使用者は、時季、日数、基準日を労働者ごとに明らかにした年次有給休暇管理簿を作成し、有給休暇を与えた期間中と、その期間の満了後一定の期間、保存しなければなりません(労働基準法施行規則24条の7)。保存期間は、規則の本文は5年間ですが、当分の間は3年間とする経過措置があります(同規則附則71条)。厚生労働省の特設サイトでも3年間保存と案内されています。
年5日の取得義務に違反した使用者は、30万円以下の罰金の対象です(労働基準法120条1号に、39条7項の違反が含まれています)。ただし、この記事では、個別の会社の違反の有無を判断することはできません。
取得のしかた:請求、時季変更権、計画的付与、時間単位
年次有給休暇の取り方には、いくつかの種類があります。
| 種類 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 労働者の請求による取得 | 使用者は、労働者の請求する時季に与えなければなりません。ただし、請求された時季に与えることが事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季に与えることができます(時季変更権) | 労働基準法39条5項 |
| 計画的付与(計画年休) | 労使協定で、有給休暇を与える時季を定めたときは、5日を超える部分について、その定めにより与えることができます | 労働基準法39条6項 |
| 時間単位の年休 | 労使協定を結べば、労働者が請求したときに、年5日以内の範囲で、時間を単位として与えることができます | 労働基準法39条4項 |
| 半日単位の年休 | 労働者が半日単位での取得を希望して時季を指定し、使用者が同意した場合に、半日単位で与えることができます | 厚生労働省の解説 |
時季変更権は、事業の正常な運営を妨げる場合だけに認められるもので、休暇そのものを断る権利ではありません。他の時季に与える必要があります。具体的に妨げる場合にあたるかどうかは、事業の規模や業務の内容などの個別の事情で変わるため、この記事では一般的な説明にとどめます。
有効期限、不利益な取扱い、休暇中の賃金
有効期限(時効)
労働基準法115条は、賃金の請求権を除く、この法律の規定による請求権について、行使できる時から2年間行わなければ時効で消滅すると定めています。厚生労働省の資料では、年次有給休暇の請求権はこの2年の時効にかかるとされ、付与された日から2年が期限です。前の年度に使わなかった分は、翌年度に繰り越して使えますが、さらにその翌年度には使えません。
不利益な取扱いの禁止
労働基準法の附則136条は、使用者は、有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないと定めています。
休暇中の賃金
有給休暇の期間について支払う賃金の算定方法は、労働基準法39条9項で、次の3つのいずれかを、就業規則などで定めることとされています。具体的な金額は、各人の賃金の形態や会社の規定で変わるため、この記事では計算をしません。実際の支払いの方法は、就業規則や賃金規程を確認してください。
- 平均賃金
- 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
- 健康保険法の標準報酬月額の30分の1に相当する金額(労使協定を結んだ場合)
困ったときの相談先
年次有給休暇の付与日数や取得の可否は、就業規則や契約の内容、勤務の実態によって結論が変わります。「自分の場合は何日か」「会社の対応は正しいのか」と迷うときは、まず就業規則を確認し、勤務先の人事・総務の担当者に尋ねてください。それでも解決しない場合は、労働基準監督署などの公的な窓口や、社会保険労務士、弁護士といった専門家に相談することをおすすめします。
よくある質問
- 入社してすぐに有給休暇は使えますか?
- 労働基準法39条の最低基準では、雇入れの日から6か月間継続勤務し、8割以上出勤した後に付与されます。会社が、入社時や6か月より前に付与する制度を設けている場合もあるため、就業規則で確認してください。
- パートやアルバイトにも、有給休暇はありますか?
- あります。働く日数が少ない場合は、日数に応じた有給休暇が付与されます(比例付与)。表は勤続年数の記事にあります。
- 年5日の取得は、誰が取らせる義務を負っていますか?
- 使用者です。年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、基準日から1年以内に5日を取得させる必要があります。労働者が自分で5日以上取得していれば、使用者が時季を指定する必要はありません。
- 会社は、有給休暇の請求を断れますか?
- 休暇そのものを断ることはできません。請求された時季に与えると事業の正常な運営を妨げる場合に限り、他の時季に与える時季変更権があります。
- 有給休暇に期限はありますか?
- 厚生労働省の資料では、付与された日から2年で時効にかかるとされています。使い切れなかった日数は、翌年度に繰り越せますが、2年を過ぎた分は消滅します。
参考にした資料
- e-Gov法令検索「労働基準法」(第39条、第115条、第120条、附則第136条):https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」(第24条の5〜第24条の7、附則第71条):https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023
- 厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」(2019年4月施行):https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/pdf/000463186.pdf
- 厚生労働省 働き方改革特設サイト「年次有給休暇の時季指定」:https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/salaried
- 厚生労働省「年次有給休暇制度について」(時効、取得単位):https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001005114.pdf
- 厚生労働省 スタートアップ労働条件「年次有給休暇はどのような場合に、何日与えなければならないのでしょうか?」:https://www.startup-roudou.mhlw.go.jp/qa/zigyonushi/yukyu/q1
上記は 2026年11月6日 に内容を確認しました。法令・制度は改正されることがあります。
この記事は一般的な解説であり、個別の事案についての労務・法律相談ではありません。年次有給休暇の付与や取得の可否、賃金の扱いは、就業規則や契約の内容、勤務の実態で変わります。迷うときは、勤務先の担当者、労働基準監督署、社会保険労務士、弁護士などの専門家にご相談ください。